2025年6月5日、DELTARUNE Chapter3+4が発売され、ファンダムに活気があふれている昨今、筆者が過去にTwitterに投稿したとあるツイートを再び話題にしていただけるようになりました。多くの方に知ってもらいたい知識なので、この度、より詳しい解説を当ブログに掲載することに決めました。


結論から言うと、「原作の描写から、クリスの性別は女性でも男性でもなく、ノンバイナリーであることが分かる」という話をします。


これは作中で文言通りに明言されていません。よって、いわゆる「考察」として当ブログでは分類します。しかし、筆者としては「明言されていないが、何度も作中で示唆されており、事実として解釈して問題ない」と考えて話します。世間的にいわれる考察よりもう一段階公式設定に近い厳格なもの、言うなれば「釈義」として当記事では語ります。厳密さを重視する上で、社会学と言語学の文献も引用して語る、非常にお堅い記事となります。

ちなみに、この話題は英語圏ユーザーにとって、UNDERTALE発売当時から激しい争いが繰り返されている、最も荒れる話題のひとつです。皆さまが当記事の結論に対して肯定派でも、否定派でも、ネット上で自分の精神を守るために、この話題を取り巻く諸事実を認識してほしいです。また、どうしても当記事の結論を受け入れられない方にも、クリスという主人公を理解する上で、原作で提示される事実を知識として知ってもらいたいです。


どんな立場であれ、この記事をUTDRを楽しむために使ってください。そして、当記事にどのような気持ちを抱いたとしても、現実のノンバイナリー当事者を攻撃することは絶対にしないでください。もし可能なら、この記事を叩き台にして、ファン同士わいわい話し合ってもらえると嬉しいです。


また、当記事は、クリスの性別議論に興味はあるが、ノンバイナリー、社会的性別などの知識を全く知らないか、勘違いしている初学者の方向けです。当事者や学問として修めた方が読むと非常に雑に感じると思います。もしよければ、専門知識のある方は、おすすめの資料を提示したり、訂正・補足をしていただけると助かります。そして、専門外の人が抱きやすいいわゆる"素朴な疑問"にも対応するため、当事者が読むとトラウマを想起させる可能性があります。ご注意ください。



議論の流れ

まず最初に、当記事の大まかな内容を最初にお伝えします。当記事の結論に肯定派であれ、否定派であれ、英語圏のクリス性別議論を理解するためには、大きく分けて5段階のステージをクリアする必要があると、筆者は考えています。

  • ステージ1:ノンバイナリーの定義と代名詞の重要性を理解する。
  • ステージ2:原作でクリスにthey/themの代名詞が使われる事実を認識する。
  • ステージ3:原作でたくさんのNPCにもthey/themの代名詞が使われる事実を認識する。
  • ステージ4:they/themの英文法を理解する。
  • ステージ5:原作の文脈を読み、they/themの意味を理解する。

英語ファンダムでは、ノンバイナリーという言葉が身近なためか、ほとんどのファンがステージ1はクリアしているように筆者は思います。性別議論の参加者はステージ2~5のどれかに属していますが、人によって知識レベルが大きく異なり、DRCh2配信直後まではそもそも議論が成り立っていない状態を筆者はよく見かけました。DRCh3+4配信後は、ほとんどの参加者がステージ5の知識レベルを持っており、議論は最終段階に突入していると筆者は感じています。

しかし、日本語ファンダムはステージ1すらままならない状態だと、筆者は思います。日本のクリス性別議論は、ステージ1~4をすべて飛び越えていきなりステージ5から入り、自分が考えるクリスの性別とその良さや熱意を語ることに全力が注がれていると、筆者は認識しています。それでは正確な議論は行えませんし、原作で明らかにされた事実の知識すら抜け落ちてしまいます。英語ファンダムと日本語ファンダムには、原作の知識量と理解度に関して、残酷なほど大きな断絶があるのです。


筆者はまずこの断絶を埋めるために当記事を書きました。結論に肯定派であれ否定派であれ、当記事を読んだ皆さまを全員、「ステージ5」へと押し上げることを第一の目標にしています。せっかく公式日本語版が出ているのです。英語圏のファンと同等の知識量を得ることで、日本語版から新事実を見つけられるかもしれません。是非、筆者と一緒に各ステージをクリアしてみてほしいです。


ノンバイナリーの定義

では早速ステージ1に入ります。そもそもノンバイナリーという言葉を知らない方が多いはず。まずは定義から確認していきましょう。

アメリカで最も老舗のメリアム・ウェブスター辞典は、以下のように定義します:

relating to or being a person who identifies with or expresses a gender identity that is neither entirely male nor entirely female [1]

男性でも女性でもない性別アイデンティティを有したり表現したりする人に関する、またはそのような人自身を指す(筆者訳)。

当事者のヤング氏は以下のように定義します。

『ノンバイナリー』とは、『男・女』『彼・彼女』『男性・女性』のようなバイナリーのどちらか一方にとらわれないすべてのジェンダー・アイデンティティを指しています。 [2]

カイ氏らが運営するBigenderというブログによると、ベン図とともに以下のように表現されます:

Showing that some nonbinary people are inbetween male and female, while others are completely unrelated to them. And some are a combination of inbetween and outside, and others still are part male or female while also being outside of the binary. And sometims people move around from one circle to another since gender can be fluid! [3]

一部のノンバイナリーの人々は、男性と女性の間に位置する人もいますし、逆に男性と女性と全く無関係の場所に位置する人もいます。また、中間と外側が組み合わさる位置にいる人や、男性または女性の一部でありながら同時に二元性から外れた人もいます。そして、流動的で時折一つのカテゴリーから別のカテゴリーの性別へと移動することもあります!(筆者訳)。


ノンバイナリーを表すベン図 カイ氏らのブログより引用[3]

筆者の言葉で補足すると、"non-binary"は直訳で「非二元論」となります。つまり、男性か女性のどちらかしか存在しないとする性別二元論を否定する、という意味が言葉に含まれています。筆者としては、上記ベン図を見るとその意味が分かりやすいと感じます。従来の社会では女性と男性しか存在しないとされていました。性別二元論では、ベン図の円は重なり合うことがなく、円の外側にいる存在も考慮しません。しかし、実際の社会ではベン図の円は重なりますし、円の外側にも人は存在します。従来の性別二元論で想定されなかった部分、それらをまとめてノンバイナリーと呼ぶのです。

日本では1990年代からXジェンダーと呼ばれて来た概念です。 [4] こちらの言葉の方が馴染みがある方もいるはずです。ですが、UTDRはアメリカ出身のToby氏による作品のため、これ以降は英語圏の呼び方に倣って、ノンバイナリーという単語を使って話します。


なお、Part2で後述しますが、以下はよくある勘違いです。

  • ノンバイナリーとは、男性か女性のどちらかが当てはまる性別不明の意味である→「男性でも女性でもないその他すべて」を指します。完全な勘違いです。
  • ノンバイナリーとは、無性のことである→「男性でも女性でもないその他すべて」を指します。無性も含みますが、もっと包括的な概念です。
  • ノンバイナリーとは、中性のことである→上と同様、中性も含むもっと包括的な概念です。
  • ノンバイナリーは、身体に解剖学的な異常がある人のことである→社会的性別(ジェンダー)を表すのがノンバイナリーです。身体的性別(セックス)とは違います。完全な勘違いです。

また、これ以降当記事では「性別」は社会的性別(ジェンダー)を指して使います。筆者の説明は入門用として雑に書いています。もっと正確に知りたい方は、必ず専門書をお読みください。


代名詞

重要となるのが代名詞というものです。正確には三人称単数形代名詞と言います。男性にはhe/him、女性にはshe/her、ノンバイナリーにはthey/themやxe/xemなどを使います。

例えば、筆者がDRのキャラクターたちを英語で紹介するとしましょう。

  • スージィに対しては、"Her name is Susie. She is a Lightner."(彼女の名前はスージィです。彼女はライトナーです。)
  • ラルセイに対しては、"His name is Ralsei. He is a Darkner."(彼の名前はラルセイです。彼はダークナーです。)
  • クリスに対しては、"Their name is Kris. They are a Lightner."(名前はクリスです。ライトナーです。)

と使います。


日本語話者には、英語でなぜ代名詞が重視されるのか、非常に分かりにくいと思います。田窪氏によると、日本語は一人称と二人称を三人称の代わりに使用する、三人称が発達していない言語だそうです。[5] 日本語では三人称代名詞を使って性別を特定することは稀ですし、代名詞を省略しても文法的に問題ないです。日本語はそもそも三人称を使わないのです。だから性別との連動性を感じにくいのです。

日本語で性別を判断するときによく使われるのは、オレ、ボク、わたし等の一人称ですが、これも英語の三人称と働きが違います。日本語の一人称は、自分で選び自分を表現するもので、いわば「自分で決められるもの」だからです。女性がオレを使っても、はしたないと周りから怒られることはあっても、使うこと自体は可能なのです。渡邊氏によると、日本語は話し手の視点を重視する言語だそうです。[6][7] これが一人称が発達した理由の可能性もあるかと、筆者は思います。


しかし、英語は日本語と違い、三人称代名詞は原則省略できませんし、文章での登場回数も多く、性別との連動がとても強いです。一人称と異なり、三人称とは、「自分だけで決められないもの」、「他人が自分をどう理解しているかを表すもの」、「社会の中であなたが他人からどう思われているのか他人が決めるもの」です。渡邊氏によると、英語は話し手より外側からの視点を重視する言語だそうです。[6][7] これが三人称が発達した理由の可能性もあるかと筆者は思います。

平たくいえば、英語を話すということは、会話の中で常にあなたは男性ですね、あなたは女性ですねと、何度も他人から性別を評価され、会話を聞いている周りにその評価を流布されることと同じなのです。そして、sheやheで呼ばれたいとどんなにあなたが願っても、希望通り使ってもらえるかは第三者次第です。性別に厳密に連動せず自分で決められる日本語の一人称と、性別に厳密に連動して他人に決定される英語の三人称は、その感じ方も社会的意味も違います。


代名詞はなぜ問題になるのか

ノンネイティブからすれば、たった2~4文字になぜ熱狂するのかまだ分かりにくいでしょう。ここからは代名詞にまつわる歴史と政治の話をします。英語の歴史コラムだと思ってお付き合いください。


英語の代名詞は昔から高い関心を集めてきました。日本語と同様に、英語にはどの性別にも使える単数形三人称代名詞が存在しません。sheかheしか選択肢がないのです。そのため、14世紀頃からシェイクスピアなど様々な作家は、工夫を凝らしてどの性別にも使える代名詞を自由に表現してきたそうです。[8] 存在しない機能の代名詞をあの手この手で表現するのは、作家の腕の見せ所だったのではないかと、筆者は想像します。


しかし、18世紀頃から、文法学者たちが自由な使用法を批判し、文法ルールを修正する運動を始めました。これを規範文法の時代と呼ぶそうです。[9] 学者たちは、過去の自由な表現は文法的に間違っており、どの性別にも使える代名詞はhe/himに統一すべきだと決定したそうです。リリー氏による、男性性の方が女性性より価値があるため、代名詞はheが優先されるべきだ、とする言葉も残されています。[10][11] この男性優位の規範を画一的に作り出したことで、言語と政治が密接に絡み始めます。

そして、どの性別にも使える代名詞をheに統一する方法は、徐々に大きな社会問題を引き起こします。例えば、アメリカ合衆国憲法には以下のような記述があります。

Article II Section 1
The executive Power shall be vested in a President of the United States of America. He shall hold his Office during the Term of four Years, [12]
第二条第一節
執行権は、アメリカ合衆国大統領に付与される。大統領の任期は4年とし、(丸山 英二氏和訳[13])

大統領に対応する代名詞はhe/himが使用されています。heに全性別を含むと学者の間では合意されたはずが、1845年には、憲法に大統領はheで書かれているから、大統領は男性しかなれず女性はなれないと主張する者も現れたそうです。[14] 投票権や弁護士資格などの分野でも、全性別に使うはずだったheが実際は正しく読まれず、女性が排除される問題が多発したと言います。[15] この問題を回避するために、he or sheと書いたり、シェイクスピアたちが使っていた単数形のtheyを取り戻して使用するなどして、男性と女性を同列に表現するよう社会が変化したようです。[14] こうして、代名詞の使用に権利意識を伴う文化が形成されていったのです。


そして、2000年代に入ると、トランスジェンダーとノンバイナリーのコミュニティにも代名詞の権利意識が広がっていきます。ジンマン氏によると、英語では相手の性別を判断するとき、外見だけでなく、使用頻度の高いheやsheという代名詞も無意識に考慮されるそうです。[16] さらに代名詞は性別情報の前提となり、第三者から第三者へ共有されていくそうです。ところが、トランスジェンダーとノンバイナリーの人々は、代名詞を間違えられ、そのまま周りに共有される頻度が高いそうです。性別が重要となる当事者にとって、代名詞とその使われ方は、自分は社会で受け入れられたのか、その成否を確実に表すバロメータなのです。

そこで、当事者たちは、自分を示す代名詞を最初から宣言する"Share your pronouns "という文化を構築し、当事者以外にも広めていきました。[17] 全米教育協会によると、これはトランスジェンダーのアイデンティティを理解し、安全な存在であることを示すためだそうです。当事者たちは性自認と性表現が必ずしも一致するとは限らないため、代名詞を提示することは、他者の性別を推測する必要のない空間を作る手段となるとの考えたそうです。[18] 今まで相手の外見から他人に想像で決定された代名詞は、本人自身が示したものを使うべきだと、判断主体が他人から本人へ転換されました。


この文化は当事者以外にも拡大し、一種のエチケットとして政治・教育・ビジネス分野に共有され始めました。例えば、Pronouns.orgが推奨する方法は以下の通りです。

  1. まず、初対面の相手にはなるべく自分の代名詞を明かします。例えば、「こんにちは、私の名前はファリダです。代名詞は『she』です、と言います。[17]
  2. 次に、相手に代名詞を確認します。例えば、「あなたのことをどう呼べばいいでしょうか?」と聞きます。回答を相手に強制しないことが重要です。[19]
  3. 代名詞を教えてもらったら、その通り使うよう努力します。[17]

ジンマン氏によると、代名詞を確認することは、今の相手の状態を確認する意味となり、性別というプライバシーを直接確認するよりも抵抗が少ない行為になるそうです。[17] 他人の代名詞を尊重するという行為は、本人のアイデンティティを尊重するという、礼儀正しい行いになりました。1700年代から2025年の現在まで、代名詞は英語圏の人々の権利意識と深く結びついてきたのです。

ノンネイティブが想像する以上に、代名詞と性別が、作家、文法学者、政治家、男性、女性、そしてトランスジェンダーとノンバイナリーの人々から長年注目されてきたことをまず知ってもらいたいと、筆者は思います。ここまでで、ノンバイナリーの定義と英語における代名詞の重要性が理解できたかと思います。ステージ1はクリアしたと言って良いでしょう。


原作ゲームなどの事実

では、ここからクリスの性別議論に関係する原作の場面などの「事実」を明らかにしていきます。クリス性別議論における、ステージ2とステージ3をまとめて理解します。当記事の結論に肯定派でも否定派でも、この章だけは知識として一番覚えてほしい部分となります。気合を入れて読んでもらえると嬉しいです。


事実1:クリスたちの代名詞

まずは、クリスやモンスターたちの代名詞に何が使われているのか、種類ごとに確認しましょう。


he/him

男性を表す代名詞、he/himです。アズゴア、メタトン、ラルセイなど他にもたくさんの男性キャラクターがこの代名詞で呼ばれます。


she/her

女性を表す代名詞、she/herです。トリエル、ぷんすかミュウミュウ、スージィなど他にもたくさんの女性キャラクターがこの代名詞で呼ばれます。


they/them

当記事で問題とする代名詞、they/themです。この代名詞で呼ばれる主要なキャラクターは以下の通りです。なお、当記事にはthey/themで呼ばれる全キャラクターを掲載できておりません。興味のある方は、他のキャラクターも探して当記事に補足していただけると助かります。


クリスは家族であるトリエルや仲間たちからtheyで必ず呼ばれます。ちなみに、英語圏のDeltarune wikiにはクリスがthey/themで呼ばれている全シーンを引用するなど、wiki編集者であるLink氏らにより、クリスがノンバイナリーであること根拠をまとめる活動が行われているので、ぜひご覧ください。2025年9月現在は55個のシーンが引用されています。[20]

https://deltarune.wiki/w/Kris_Dreemurr

DELTARUNE Chapter2 冒頭の学校シーンより引用[21]


モンスターの子はUTでアンダインからtheyで呼ばれます。

UNDERTALE Nルート アンダインの電話より引用[22]


ナプスタ・ブルークはメタトンなどからtheyで呼ばれます。

UNDERTALE Nルートより引用[22]


ぷんすかマネキンはナレーション中でtheyで呼ばれます。

UNDERTALE Nルート ぷんすかマネキン戦より引用[22]


最初に落ちてきたニンゲン(ファン内ではcharaと呼ばれる)も家族であるアズリエルやトリエルからtheyで呼ばれます。

UNDERTALE TPルート 散歩シーンより引用[22]


フリスクもトリエルやパピルスたちからtheyで呼ばれます。

UNDERTALE TPルート アズリエル戦終了後より引用[22]


アイスウルフは自分自身をtheyで呼びます。

UNDERTALE TPルート 散歩シーンより引用[22]


このthey/themが何を表すかはさておき、まずは、クリス以外にもたくさんのキャラクターが作中でtheyの代名詞で呼ばれるという事実を覚えてください。そして、theyの代名詞はクリスやフリスクなどの主人公に限られず、NPCにも使われているということも覚えてください。主人公に限らず多様なNPCにも使用されていることから、they/themという代名詞は、主人公のために特別に用意された代名詞ではなく、UTDR世界にいる人物たちには馴染みがある一般的な代名詞なのだと、筆者は考えます。


日本ファンダムでは、クリスだけが特別にthey/themで呼ばれていると思ったまま性別議論に加わる方をよく見ます。それは原作の事実を根本から誤認しています。この機会に使われているキャラクターたちを何人か覚えてみてください。それができれば、クリス性別議論のステージ2、ステージ3を一気にクリアすることができます。


it/its

豆知識的に他の代名詞も載せておきましょう。現実社会では「人間以外のモノ」を表す代名詞のit/itsです。うざい犬、UTの遺跡にいるマネキン、DR冒頭で作る器、予言の天使にこの代名詞が使われます。本記事の内容からズレるのでこれ以上触れませんが、信仰対象の天使をモノ扱いするitで呼ぶのは不思議な使い方だなと、筆者は気になっています。

DELTARUNE Chapter1 器を作るシーンより引用[21]

I/me

自分を表す代名詞のI/meです。筆者が軽く調べたところ、クリスが自分のことをI/meと呼んだシーンは、Ch4までで1回も見つけられませんでした。逆にプレイヤーの選択肢としてなら、Ch1のサンズに自分を紹介するシーンと、Ch4のAルート(Weirdルート)ソファのシーンでのみ、プレイヤーの選択肢として"Me"という単語が現れます。本記事の内容からズレるので特にこれ以上触れませんが、気になる方は他に使われた箇所がないか検証してみてください。

DELTARUNE Chapter1 光の世界のシーンより引用[21]

theyの英文法

それではここからはクリスたちに使用される代名詞they/themがノンバイナリーを指す意味だと、詳しく分析していきましょう。ですが、UTDRのセリフを読み込む前に、クリス性別議論ステージ4で課題となる、英文法のルールについて知っておく必要があります。会話の中でthey/themを使うとき、実は3通りの方法があるのです。[23] では、それぞれの文法を見ていきましょう。


複数人を表すthey

まず、最も標準的な英語文法で日本語話者にもなじみのある使い方が「複数形三人称としてのthey」です。複数人をまとめて呼びたいときに使います。例えば、筆者がクリスとスージィの2人について説明したいときは、

    "Kris and Susie are Lightners. They are heroes."(クリスとスージィはライトナーです。2人は勇者です。)

と使います。クリスとスージィの2人をまとめて代名詞で呼んでいます。この場合、対象の性別は全く関係ありません。複数形は性別議論に何も関係しないため、本記事でもこれ以上扱いません。


①エピセンthey

次に、14世紀ごろから出現した使い方が、対象の性別がわからないとき等につかう単数形のthey/themです。[23] 言語学の世界では、専門用語でepicene(エピセン)theyと呼ばれます。[24] 当ブログでも以降「エピセンthey」として表記します。分かりやすく、当ブログでは灰色で表示します。これは実際にDRのCh1でアンダインが使っています。彼女のセリフを例に解説していきましょう。


アンダインはCh1でアルフィーのことを知りませんでした。クリスから名前を聞いて、誰だそいつ?と言いながら話を進めます。

DELTARUNE Chapter1 光の世界のシーンより引用[21]

ここで、アンダインはアルフィーを指す代名詞にtheyを使っています。なぜなら、アンダインはこの時点ではまだアルフィーという名前しか知らないからです。男性なのか女性なのかノンバイナリーなのか、話題の対象の性別を全く知らないからです。これが「エピセンthey」になります。


ここで前述した英語文法の歴史の知識を思い出してください。対象の性別がわからないとき、昔はhe/himのみで全ての性別を表そうとしました。もしこの時代にアンダインのセリフを書くなら、

    "... Why, did he do something illegal!?"

となります。まず意味が分からないと思います。我々はアルフィーが女性であると知っていますから。いやいや女性だよと訂正したくなる使い方です。


このようにheだけを使うと女性の存在が抹消される問題が生じました。そこで、女性の権利を取り戻すために、he or sheと書くようになりました。もしこの時代にアンダインのセリフを書くなら、

    "... Why, did he or she do something illegal!?"

となります。sheが選択肢に入ることで、アルフィーが女性である事実を知っている我々にとって、割とすんなり入ってくる言い方になりました。


しかし、he or sheの書き方には、とてもくどい言い回しであり、使いにくいという問題がありました。[23] 会話の中でイチイチ毎回he or sheなど言っていられません。よって、he or sheを単数形のtheyで書く時代が始まります。

    "... Why, did they do something illegal!?"

これが作中でアンダインが使っていた使い方になります。he or sheの代わりにtheyを使っています。この表現をみると、我々はアルフィーが女性であると知っているけど、アンダインは知らないんだな、ということが分かります。そして、女性の可能性も残しているので、文脈上は変でもないし失礼にもならないのです。

①エピセンtheyについては、英語史の専門家である堀田氏が解説しているYoutube動画があるので、詳しく知りたい方は参考文献を見てください。[25]


ちなみに、咆哮の騎士であるナイトも①エピセンtheyが使われています。

DELTARUNE Chapter4 咆哮のシーンより引用[21]

ナイトはスージィからthey/themで呼ばれています。なぜなら、スージィたちはナイトの正体を知らないからです。男性なのか女性なのかノンバイナリーなのか、相手の情報を全く知らないからです。通常は相手の性別を知らないとき、相手の目の前でtheyを使うことはありません。とても失礼にあたるからです。直接会話をしているなら、どの代名詞を使うべきか相手に聞くのがマナーです。[19] しかし、ナイトは敵で、話が通じる相手でもないので、スージィは①エピセンtheyを使っているのでしょう。

キングも同様にthey/themで呼んでいます。Ch1でキングはナイトと親しそうでしたが、実はそこまでナイトのことを知らないのかもしれません。今後ナイトの正体が明かされた場合に、he, she, theyのどの代名詞に変化するか注目してみると面白いと思います。


②ノンバイナリーを表すthey

最後に、約20年前から使われ始めたのが、ノンバイナリーを表す単数形のtheyです。当記事では、「②ノンバイナリーthey」と筆者は呼ぶことにします。紫色で当ブログでは表示します。②ノンバイナリーtheyは、①エピセンtheyと異なり、単数かつ性別を知っている相手に使います。[23] 例えば、ノンバイナリーであることをカミングアウトしたシンガーソングライターのサム・スミス氏について、BBCは以下のように使用しています。

Six months ago, Smith said they did not feel male or female, but "I flow somewhere in between."[26]
6か月前、スミス氏は「自分が男性か女性のどちらかとは思えず、『その間を漂っている』感じがします」と告げた。(筆者訳)

スミス氏をtheyで表していることが分かります。これはノンバイナリーの人々が、自分たちのアイデンティティを守るために、they/themで呼んでほしいと運動を始めたことがきっかけで生まれた文化なのです。その運動が実を結び、自分はノンバイナリーであるとサム・スミス氏がカミングアウトしたことで、英語圏では②ノンバイナリーtheyという代名詞の知名度がますます上がっていきました。[26] 結果として、アメリカ老舗辞書であるメリアム・ウェブスター英語辞書でも、正式にノンバイナリーを表す代名詞として登録され、2019年には検索ランキング1位を獲得して「今年の言葉」として表彰されました。[27] こうして、今ではthey/themという代名詞でノンバイナリーを表すという文化は英語圏で広く受け入れられるようになりました。

ちなみに、ヤング氏によると、ノンバイナリーの人でもtheyで呼んでほしくないという方もいるので、現実社会では、ノンバイナリーだとカミングアウトを受けた場合、相手の好む代名詞を2人きりのときに尋ねることが推奨されるそうです。[2] 詳しくは専門書を読んでください。


ノンバイナリーである根拠

これまでの説明から、クリスの代名詞は単数形のthey/themが使われているという事実を理解してもらえたかと思います。そして単数形のtheyには、対象の性別を知らないとき等につかう「①エピセンthey」と、相手をノンバイナリーと知っていて使う「②ノンバイナリーthey」の2種類があると言いました。それさえ分かれば、クリス性別議論のステージ4はクリアできたと言えるでしょう。


ところが、この英文法ルールに議論が荒れる理由のすべてが詰まっています。ずばり、they/themが①と②のどちらなのかは、文脈を読まないと判別できないのです。


クリスたちのthey/themを、①エピセンtheyだと受け取った人は、「クリスの性別はどの性別も可能性がある。男性か女性のどちらかである"性別不明"だ。性別は決定されていない。」と考えます。[28] ②ノンバイナリーtheyだと受け取った人は、「クリスの性別はノンバイナリーを指している。男性でも女性でもない。性別は不明でなく決定されている。」と考えます。[29] ①と②のどちらなのかは文脈からしか分かりませんが、人によって原作読み込みレベルが異なるため、どうしても揉めてしまうのです。これがクリス性別議論のステージ5に相当し、現在英語圏で激しく議論されている内容なのです。


では、この状況からどのように考えれば、クリスたちに使われるtheyが②ノンバイナリーtheyであり、クリスたちの性別がノンバイナリーという結論になるのでしょうか。これには4つの根拠があります。


根拠1:単数形である

まず、大前提として①エピセンthey②ノンバイナリーtheyも単数形になります。それを原作の文法から確認しましょう。例えば、Ch2でクイーンのゲームをやってみないかと、ラルセイがクリスに呼びかける時の台詞を見てみましょう。

DELTARUNE Chapter2 アーケード対決シーンより引用[21]

文頭では"Kris is~"となっており、クリスという人物は単数形なことが分かります。クリスは複数人ではなく、1人のニンゲンを指す名前なので当然単数形になります。その単数の主語をもつ付加疑問文は、"aren't they?"となっています。付加疑問文は文頭の主語の種類に連動して変化します。単数形のKrisに対応するのが文末のtheyなので、英文法ルールから考えると、このtheyは単数形であると分かります。よって、①エピセンthey②ノンバイナリーtheyのどちらかだと、選択肢を絞り込めました。


根拠1:家族にtheyで呼ばれる

では①ではなく②だとなぜ言えるか考えていきましょう。ずばり、Agent Raven氏、Tiger Bear氏、neat氏などが提唱する、家族にtheyで呼ばれているから②ノンバイナリーtheyで確定だという説が根拠です。[29][30][31] この説は通説として英語ファンダムでも一番多く目にします。筆者もこの説に全面的に同意します。


家族は最も距離が近い関係です。その家族がエピセンtheyを使うことは考えられません。例えば、トリエルが自分の子どものクリスに①エピセンtheyを使っていると仮定しましょう。すると、トリエルが「わたしはクリスの母親だし8年以上一緒に暮らしているけど、クリスの性別は知らないし、知る気もないし、クリスのアイデンティティを本人に確認して大切にする気もない」と、アルフィーなど家族以外の赤の他人に意思表示することになります。Steamの性別議論スレッドのコメントには、この仮定に従うと、「親が子どもの性別を知らないとするのは悲しすぎる……」という反応もあります。[32] 現実の親子関係間で使われる場合は、①エピセンtheyではなく、②ノンバイナリーtheyだと考えることが自然なのです。


また、たとえどの性別にも使える①エピセンtheyだとしても、自身の代名詞がshe/herやhe/himであると考えている人に対して何度も使うことは、当人の希望を無視することに繋がります。これはその人のアイデンティティを否定することに繋がり、ジェンダーを明示しないことが逆に暴力的な行為となると、Hanna氏らは言います。[33] 仮にクリスが女性または男性だったとすると、どの性別にも当てはまり性別の特定を避ける①エピセンtheyを使い続けることは、逆にクリスのアイデンティティをトリエルが無視し続けていることになってしまうのです。


筆者も、①エピセンtheyという解釈は一貫性がないと考えます。トリエルは子どもの性別に興味のない失礼で怠惰で虐待的な親なのだと考えることも不可能ではありません。しかし、他のthey/themで呼ばれるNPCたちも、同様に失礼な扱いを周りから常に受けていることになってしまいます。クリスたちは自分のアイデンティティとしてtheyの代名詞を選び、周りにそう呼んで欲しいとお願いし、トリエルたちもそれを了承していると考えることが自然です。相手の性別を知っていてあえて使うthey、つまり②ノンバイナリーtheyだと仮定すると、トリエルの会話もNPCたちの会話も、全て相手の性別を示す代名詞を使っているだけの日常的な会話と解釈できます。全てのtheyで呼ばれるキャラクターを一貫して説明することができるのです。

DELTARUNE Chapter2 冒頭の学校シーンより引用[21]

なお、この家族に注目する方法を適応すると、トリエルとアズリエルやフラウィという家族からtheyで呼ばれているCharaもノンバイナリーで確定します。隣同士で暮らしていた元いとこのメタトンからtheyで呼ばれるナプスタも、ノンバイナリーで確定します。この方法が最も確実にノンバイナリーであると判断できるものだと、筆者は思います。


根拠3:本人の目の前でtheyで呼ばれる

フリスクには家族はいません。よって、前述の家族や見知った友人にtheyで呼ばれたかどうかで見分ける方法は使えません。しかし、別の方法で判別可能です。ずばり、Agent Raven氏による、本人の目の前でtheyを使っているので、②ノンバイナリーtheyで確定だという説が根拠になります。[29] こちらに筆者も全面的に同意します。


アズリエル戦の後、フリスクはパピルスなど仲間たちから本人の目の前でtheyで呼ばれます。

UNDERTALE TPルート 散歩シーンより引用[22]

これをあえて①エピセンtheyと仮定しましょう。もしトリエルたちが、大勢の仲間たちの前で、フリスク本人の目の前でエピセンのtheyを使う場合、「フリスクの性別をわたしは知らないし、本人に確認したこともないし、今確認するつもりもないけど、この子の性別は男性か女性かノンバイナリーのどれかなんですよ皆さん」と周囲に伝えることになります。現実社会でこのような話し方は、たとえ親でなくても、あなたに興味はありません、あなたのアイデンティティを大切にする気はありませんという否定の意思表示になります。仲間たちが今まで知らなかった友だちの名前を初めて呼ぶという大切なシーンで、そのような失礼なことをするとは考えにくいと筆者は思います。

もし②ノンバイナリーtheyだと仮定すると、フリスクという名前を知った際に、同時に代名詞も知ったと捉えることが可能です。トリエルたちはフリスクの性別に対応する代名詞を使っただけという、現実的に違和感のない文脈になります。以上から、フリスクの代名詞も②ノンバイナリーtheyだと筆者は思います。


なお、Kaufman氏によると、代名詞が指す対象との距離によって①エピセンtheyか、②ノンバイナリーtheyか、感じ方が変わるらしいのです。[35] 相手がその場にいないときは、①も②もどちらも使う可能性があるそうです。しかし、相手が目の前にいるときに使う単数形のthey/themは、②ノンバイナリーtheyと確定するそうです。例えば、以下のような会話を想定します。

(1) When my boss gets in I can let them know.

私の上司が来たときに私から上司に伝えます。(筆者訳)

(2) This is my boss; they're also a contra dancer.

こちらは私の上司です。コントラダンサーでもあります。(筆者訳)

Kaufman氏によると、(1)の文章を読んでも上司が①エピセンtheyか、②ノンバイナリーtheyか分からないそうです。確かに、「上司の性別はあなたが直接会って本人に確認すべきだから、私からは言わないでおきます」という意味で①エピセンtheyを使う可能性もあります。もちろん、上司がノンバイナリーである可能性も残っています。その場に上司は存在しないので、どちらなのかは本人に直接会わないと分からないでしょう。

しかし、(2)の文章は上司が②ノンバイナリーtheyの代名詞を使用する人物だと認識するそうです。あなたに紹介しているという、とても距離の近い位置での会話だからです。このように、会話における対象との距離が2つの単数形theyを見分ける根拠になるのです。


現実社会の英語話者の感覚からしても、フリスクの目の前でみんながthey/themを使うということは、②ノンバイナリーtheyだと考えていいと、筆者は思います。もちろん、家族だけでなく仲間のラルセイたちがクリスの目の前で平然とtheyを使っていることからも、クリスの代名詞は②ノンバイナリーtheyと考えていいと、筆者は思います。

DELTARUNE Chapter2 アーケード対決シーンより引用[21]


根拠4:自分自身に使用する

非常に特殊な例ですが、アイスウルフがノンバイナリーだと判別できる根拠があります。ずばり、本人が自分自身に使用しているから②ノンバイナリーtheyで決まるのです。UTのアズリエル戦の後にスノーフルにいくと、アイスウルフは以下のように自分のことを教えてくれます。

UNDERTALE TPルートより引用[22]

この文では、"Ice Wolf"と自分自身の名前を主語にして、その代名詞にtheirを使用しています。もし①エピセンtheyだと仮定すると、アイスウルフは自分自身の性別を知らない、男性か女性かノンバイナリーのどれであるが分からない、と自ら第三者に伝える不自然な状態になります。②ノンバイナリーtheyであれば、自分の性別情報を第三者に伝えているだけの自然なシーンとなります。

なお、このように会話文で自身について三人称視点で話す話し方は、珍しくはありますが現実社会でも使われており、心理カウンセリングの一種として、"Distanced self-talk"と呼ばれ使用されるそうです。[36] 現実には存在しない詩的な表現ではなく、使う人たちはいるのです。


自分自身にthey/themを使用している人物は、2025年9月現在、UTのアイスウルフのみです。クリスやフリスクにこの判別方法は使用できません。今後、同じ喋り方をするキャラクターが登場するか、注目しても面白いと思います。


Part1まとめ

ここまでの議論は、ノンバイナリーの定義の確認、原作事実の提示、およびその英文法解釈をまとめました。これがクリスの性別議論において、最も重要かつ最も基礎的な内容になります。性別議論に参加する際は、Part1の内容だけでも確実に覚えていただけると幸いです。以下にもう一度簡潔にまとめます。

  • ノンバイナリーとは、「男性でも女性でもないその他すべて」を指す包括的な概念である。
  • クリスの代名詞は単数形のthey/themである。これは原作ゲーム内で常に使われている公式設定である。
  • クリス以外にもたくさんのキャラクターが単数形のthey/themで原作ゲーム内で呼ばれている。これも公式設定である。
  • クリスたちを英語で呼ぶ時は、公式設定のthey/themで呼んであげてほしい。
  • 単数形they/themには、①性別を知らないとき等に使う「エピセンthey」と、②ノンバイナリーの人に使う「ノンバイナリーthey」の2種類がある。どちらか見分けるには文脈を読む必要がある。
  • 家族にtheyで呼ばれているため、クリスの性別はノンバイナリーと分かる。
  • クリス本人の目の前でtheyで呼ばれているため、クリスの性別はノンバイナリーと分かる。


また、ノンバイナリーが確定したキャラクターたちについて、議論の内容を画像でまとめておきます。下記画像だけでもシェアしてもらえると嬉しいです。


次回のPart2では、they/themで呼ばれるキャラクターたちがノンバイナリーだとさらに確信できる追加の事実と、UTDRの世界にノンバイナリーが存在すると補強する追加の事実を紹介します。

  • UT6周年記念配信でのToby氏によるクリスとヌイの代名詞修正発言
  • UT公式Artbookの誤記修正
  • 公式ニュースレターとヌイの代名詞
  • ルールノーの謎文法と英語史
  • ジェビルとテナの発言にノンバイナリーの含意あり
  • 忘れられた島のテキストにノンバイナリーの暗喩あり

さらに続くPart3では、クリスノンバイナリー説へのよくある疑問やメジャーな反論に対して、筆者がQ&A方式で回答していく内容を予定しています。なるべくPart2は迅速にアップするよう気を付けますが、筆者の実生活の影響でPart3の掲載は非常に遅れてしまうと思います。気長にお待ちください。


ここまで読んでくださった皆さまには、まず心から感謝申し上げます。そして、お願いがあります。ノンバイナリー当事者と、社会学か言語学の学位を取得された方は、筆者の至らない点を訂正・補足して頂けますと幸いです。当記事の結論に肯定的な方は、当記事で挙げていないthey/themのキャラクターや根拠などを補足して頂けますと幸いです。もし当記事の結論に反対の場合は、原作のセリフや信頼できるソースを提示して、ブログや動画など、誤解されにくい長文形式で反論をまとめて頂けますと非常に助かります。

また、原作ゲームのスクショを集めることは、筆者の友人に手伝って頂きました。とても大変な作業なので、友人なしではPart1の記事すら書けませんでした。本当に本当にありがとうございました!


この記事をきっかけに皆さまがUTDRの色々なシーンを思い出したり、深く考えたりすることで、より作品を楽しめる一助になれますと幸いです。



参考文献

  1. Merriam-Webster, “Nonbinary.” Merriam-Webster.Com, 2025-9-11, https://www.merriam-webster.com/dictionary/nonbinary, (参照 2025-9-13)
  2. エリス・ヤング. ノンバイナリーがわかる本heでもsheでもない、theyたちのこと. 明石書店, 2021.
  3. Kai et al. “Hi! I'm trying to explain trans and nonbinary” Bigendering, 2020-10-11, https://bigendering.tumblr.com/post/631729235667582976/hi-im-trying-to-explain-trans-and-nonbinary, (参照 2025-9-13)
  4. 武内今日子. “Xジェンダーはなぜ名乗られたのか――カテゴリーの力能を規定する社会的文脈に着目して――.” 年報社会学論集, vol. 2020, no. 33, pp. 133-144.
  5. 田窪行則. “対話における聞き手領城の役割について 一三人称代名詞の使用規則からみた日中英各語の対話構造の比較.” 認知科学の発展, vol. 3, 1990, pp. 67–84.
  6. 中村芳久. “認知モードの射程.” 「内」と「外」の言語学 坪本篤朗 他 編 開拓社, 2009. pp. 353-393.
  7. 渡邊淳也. “【日本語と英語で見える世界が違う?】直訳はなぜ問題があるのかー言語によって異なる認知モード.” 東大TV, 2024-01-25, https://tv.he.u-tokyo.ac.jp/pipili23_2020_friday_watanabe/,(参照 2025-9-13)
  8. McDaniel, Spencer. “Why Singular ‘They’ Should Be Grammatically Acceptable.” Tales of Times Forgotten, 2021-05-10, https://talesoftimesforgotten.com/2021/05/10/why-singular-they-should-be-grammatically-acceptable/, (参照 2025-09-19)
  9. 堀田隆一. “#141. 18世紀の規範は理性か慣用か.” Hellog~英語史ブログ, 2009-09-15, https://user.keio.ac.jp/~rhotta/hellog/2009-09-15-1.html, (参照2025-09-20)
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  16. Zimman, Lal. “Transgender Language Reform.” Journal of Language and Discrimination, vol. 1, no. 1, Nov. 2017, pp. 84–105.
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  21. DELTARUNE. Directed by Toby Fox, version 1.04., 8-4, 2025. Nintendo Switch game.
  22. UNDERTALE. Directed by Toby Fox, version 1.11., 8-4, 2018. Nintendo Switch game.
  23. Caulfield, Jack. “Singular They | Usage, Examples & History.” Scribbr, 2023-02-22, https://www.scribbr.com/nouns-and-pronouns/singular-they/, (参照 2025-9-23)
  24. Konnelly, Lex. “Gender diversity and morphosyntax: an account of singular they.” Glossa: a journal of general linguistics, vol. 5, no. 1, Apr. 2020.
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  30. Tiger Bear. “Are they non-binary? — Analyzing Undertale/Deltarune's trans representation.” YouTube, uploaded by Tiger Bear, 16 Sep. 2019, https://www.youtube.com/watch?v=76gWoQM0yps
  31. neat, “Non-binary characters in Undertale and Deltarune.” suzyundertale, 2022-05-19, https://suzyundertale.tumblr.com/post/185072983702/non-binary-characters-in-undertale-and-deltarune, (参照 2025-9-29)
  32. Shuttah Mike. “Is Kris really non-binary? US law says otherwise…” Steam, 2025-07-18, https://steamcommunity.com/app/1671210/discussions/0/604161881226211808/?l=danish, (参照 2025-9-23)
  33. Hanna, Alex et al. “Actually, We Should Not All Use They/Them Pronouns” Scientific American, 2019-05-03, https://www.scientificamerican.com/blog/voices/actually-we-should-not-all-use-they-them-pronouns/, (参照 2025-9-29)
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  35. McCue, TJ. “Self Talk In Third Person Can Help You Succeed” Forbes, 2019-09-06, https://www.forbes.com/sites/tjmccue/2019/09/06/tj-your-posts-are-radically-helping-forbes-readers/?sh=7b9cd0fd68ee, (参照 2025-9-29)