ノエルのブログからわかる!Deltaruneの年代考察【スパムトンステークス】
2022年9月18日にスパムトンステークスが開催され、そのHPの日本語訳が2022年12月1日に満を持して公開されました。色々な小ネタが日本語でわかりやすくなり、多くの方が楽しめるようになりました。ハチノヨンさん、福市さん、翻訳ありがとうございます!
今回取り上げるのは公式紹介記事ではありません。いわゆる「考察」を発表するためにこの記事を書きました。
あのトビー・フォックス、あのハチノヨンが3ヶ月もかけて出してきたものです。ただの翻訳で終わりなわけがないと信じたい。Deltarune Chapter3,4発売直前には公式ニュースレター配信後にスパムトンステークスのHPがアップデートされ、続きのチャプターを暗示するコンテンツも追加されました。Toby氏いわく、「本編とは関係ない」ようですが、本当にそうでしょうか?絶対なにかあるはずだ!
ということで、日本語版が出て初めてわかった、日本語版にしかないポイントから、とある「考察」を筆者が唱えさせて頂きます。
結論を先に言います。
「ノエルのブログの顔文字から、DELTARUNE本編の時代設定は、現実の2006~2010年をモチーフにしていると分かる」ということを筆者はこの記事で主張していきます。
原作のChapter2とスパムトンステークスのネタバレ全開です。まだ見ていない方は必ずゲームをプレイして、サイトをチェックした後にお読みください。また、これは公式情報ではなく、個人の考えた一説でしかないということに注意して下さい。
↓スパムトン・ステークス日本語版公式サイト
https://deltarune.jp/sweepstakes
ノエルのブログから分かること
重要となるのは2つのページ。ノエルのブログとノエルのお姉さん(ディセ)の404エラーページです。
1. ディセの404エラー
目撃情報のページにはディセについてのリンクがあり、それをクリックすると404エラーが出てしまいます。
ディセの404エラーページ(スパムトン・ステークス公式HPより引用)
https://deltarune.jp/december/
実はこれ、エラーではなく「昔のエラーページそっくりに偽造した正常なページ」です。その証拠に、上図では筆者のブラウザはGoogle Chromeを使っていますが、「Internet Explorer」と表示があります。わざと書いてあるのです。
昔はほとんどの人がIEを使っており、この404ページも見慣れたものでした。ネット歴が長い方ほど、「なんだただの404か……」と引っかかる罠ですね。筆者も騙されました。気付いて教えてくれた友人に感謝します!
そして、このデザインのエラーページを出すブラウザは、IE6以前のバージョンです。IE6が終了したのは2006年。丁度Windows OSのVistaがリリースされ、XPからVistaに変わる転換期まで存在していたのです。VistaにはIE7が標準搭載されたので、IE6はXPで終了したブラウザとなりました。
XP時代のIE5の404エラーページ(日経XTECHより引用)
https://xtech.nikkei.com/it/free/NT/WinReadersOnly/20040415/42/
XP時代のIE6の404エラーページ(日経XTECHより引用)
https://xtech.nikkei.com/it/pc/article/NPC/20060822/246101/
XP/Vista混合時代のIE7の404エラーページ(CODEZINEより引用)
https://codezine.jp/article/detail/1340
上図のように、IE5、6のデザインがディセの404ページのデザインと同じことがわかります。ちなみに、IE4以前の404エラーページを探したのですが、ネット上に画像がなく比較ができませんでした。レトロPC本体を持っている人でない限り、正確なデザインを把握できないと思います。ハチノヨンがこの偽造画像を作成するとしたら、IE5以降を参考にすると筆者は考えます。
ここから、「スパムトンステークスのページはIEから見ていることを前提に見てほしい」のではないか?と仮説を立てます。
2. 顔文字の違和感
ノエルの顔文字は英語版だと簡易的なものでしたが、日本語版になり、日本語話者に馴染みのあるものに変りました。
ノエルの日記(スパムトン・ステークスより引用)
ノエルが書いた顔文字を見てみます。
(≧∇≦)
(´∀`;)
(〃∇〃)
(*ノ>ᴗ<)
この顔文字たち、なにか違和感を感じませんか?あえて雑な言い回しをすれば、「オタクしか使わない古い顔文字と、リア充寄りの人が使う新しい顔文字が混在している」のです。
筆者としては
(´∀`;)(≧∇≦)(〃∇〃) →古い
(*ノ>ᴗ<) →新しい
という感覚があります。これはかなり正しい感覚であり、明確な理由が存在します。「新しい顔文字にはUnicodeという特殊文字が使われており、古いデバイスやブラウザには対応しておらず、顔文字として使えなかった昔の世代と、使えるようになった新しい世代に分かれるから」です。
パソコンに詳しい方なら、文字コードというものを聞いたことがあると思います。PCでは文字に全て番号が与えられており、何の文字をどこまで登録するかは規格によって異なりました。
有名なもの
・JIS漢字コード:日本語用の規格。外国語はほとんど登録されていない。有名なShift-JISはこの一種
・Unicode:世界の様々な言語をこれひとつで使えるようにするための統一規格。タイ語、アラビア語など多数の文字を採用している。
XPまでの日本のパソコンには、JIS漢字コードがメインで使われていました。UnicodeはPCに詳しい人なら使えましたが、一般には普及しておらず、ブラウザも非対応でした。非対応のブラウザでUnicode文字を使ってしまうと「文字化け」が起こりました。
当時は「Unicode非対応環境の一般人がたくさん集まるネット上では、文字化けしないようにUnicode文字を使わない」のが通例でした。顔文字も人に表情を伝えるためのものなので、文字化けしては意味がありません。よって、昔の顔文字は普及していたJIS漢字コードだけで表現できるものが使われました。
このような技術的な問題から、古い顔文字は種類が少なく単調でぎこちなく、新しい顔文字はUnicode文字を駆使しているので複雑でかわいいのです。
昔からネットを使っていたオタク気質な人は慣れ親しんだ文字化けリスクが低い古めの顔文字を、環境が整備されてからネットを始めたリア充寄りの方は気にせず新しい顔文字を使う傾向にありました。
ではノエルはどうでしょうか。Unicode文字を使っているが、やたらと複雑な現代顔文字は使っていない。
現代顔文字→٩(๑òωó๑)۶
もし、ノエルがUnicode文字を自由に使える環境なら、もっと複雑でかわいい顔文字を使うのではないでしょうか。
ここから、「ノエルはUnicodeが普及し始めた初期の世代だから、古い顔文字と新しい顔文字が混在しているのではないか?」と予想できます。
3.ブラウザから年代特定
では、より年代を絞り込んでみましょう。
ディセの404エラーから、全てIE前提で考えてみることにします。ノエルも自分のブログはIEから書き、IEで見ている人が多いと思って運営しているでしょう。
IE6まではUnicodeは非対応でした。ノエルの幼少期のエピソードのページには、IE5/6の404ページがありました。IE7以降はUnicodeに対応しました。
よって、ノエルの幼少期はIE5か6の時代、デルタルーン本編はIE7以降の時代と言えるのです。
そしてIEの歴史はOSとも連動します。IE6は2006年、windows XPで終了します。IE7はVistaに標準搭載されました。IE8がリリースされる2009年まで最新のIEブラウザでした。
つまり
・幼少期ノエル→IE5とIE6を使うXP世代:1999〜2006年
・本編ノエル→IE7かつVista世代:2006年以降
と対応していると考えられます。
4. Unicode顔文字の開発と終焉
では、より詳細に年代を突き詰めていきます。
Unicode顔文字はいつ・どこで生み出され、使われるようになったのでしょうか?その時期がぴったりと分かれば、ノエルの年代もより特定できます。
Unicode顔文字の発祥の地を特定することは、筆者にはできませんでした。2chのAA板が発祥だと思って探したのですが、特定には至りませんでした。代わりに、2005年5月18日にUnicode顔文字を紹介している日本のブログ記事を見つけました。まだ多くのブラウザで非対応の時代のはずですが、この頃には開発が始まっていたようです。
『オリジナル顔文字の紹介』(なたで日記)
https://blog.natade.net/2005/05/18/%e9%a1%94%e6%96%87%e5%ad%9701/
また、2008年9月9日に、はてな匿名ダイアリー上で眉毛が特徴的なUnicode顔文字をタグ付けする遊びが流行していたことがわかる記事も見つけました。この頃がUnicode顔文字の全盛期とも言えるのではないでしょうか。
『[( ・ิω・ิ)]ってタグは付けるな!』(はてな匿名ダイアリー)
https://anond.hatelabo.jp/20080909205306
しかし、Unicode顔文字にも終わりの時代が近づきます。現在親しまれている日本由来の「絵文字文化」を世界標準にしようと、技術統合が進められていたからです。
2008年11月21日にiPhone OS 2.2がリリースされました。このおかげで、日本のガラケーに使用されている絵文字を日本のiPhoneで使用可能になりました。そして来たる2010年10月11日、Unicode 6.0.0がリリースされ、世界中で日本の絵文字を使う事ができるようになりました。この日が世界にとっての絵文字時代の始まりであり、日本のネット上から顔文字が衰退していく終焉の日でもあったのです。
『これからの絵文字の実装指針、UTR #51“Unicode Emoji”とはなにか』(INTERNET watch)
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/686161.html
もしノエルが現実世界にいたとすれば、顔文字より絵文字が使いやすくなったなら、絵文字を優先して使うと筆者は思います。とすれば、絵文字時代以前にこのブログは書かれたはず。
つまり、ノエルのブログは2010年以前をモチーフにしているとほぼ確実に言えるでしょう。
まとめ
まとめると、
・幼少期ノエルとディセ失踪の時期は「IE5のリリースからIE7リリースまでの1999年~2006年」の現実世界をモチーフにしている可能性がある。
・作中の時期は「VistaとIE7がリリースされた2006年以降」かつ「Unicode 6.0.0がリリースされた2010年まで」の現実世界をモチーフにしている可能性がある。
というお話でした。
現在のノエルの年齢を中学生と仮定して14歳とすると、幼少ノエルは3~10歳程度と見積もれます。小学生低学年前後の女の子というイメージは回想シーンも納得できそうな……?
そして、この2008年前後はUndertaleとDeltaruneにとっても特別な時期です。あのRadiation氏が例の「ハックROM」を発表した時期が2008年10月であり、丁度その周辺の時期と重なるのです。この「ハックROM」という言葉が何かわからない方は、とてもデリケートでタブーな話になるため、ご自身で調べるようお願い致します。
Toby氏の人生にとって大切な2008年前後という時期。そしてノエルがこっそり遊んでいるゲーム改造という趣味。何かつながりがありそうな予感がしてきませんか?
ノエル年代考察まとめ(筆者作成)
上にここまでの議論をまとめた表を載せておきます。ただ、正確な時代考証をしようとした分、最初に筆者が想定していた以上に年代の幅が広がってしまいました。今後の描写次第でより年代の幅を狭く特定できると嬉しいです。
筆者はDeltaruneはToby氏にとって半自伝のような作品だと予想しています。自分のクリエイターとしての思いと人生を面白おかしくエンタメにすることで、自身のトラウマを乗り越え、世界中の人を楽しませ、彼に触発された未来のクリエイターたちが羽ばたいて行けるよう背中を押してくれる。そんなゲームにしたいのではないかと、Chapter2を終えた現時点では予想します。
あの頃Toby氏は何を思い何を作ったのか。少しでもその一端を垣間見ることができたなら、ファンとしてはとても嬉しいです。ただ、公式ブログの言葉を借りるなら、これはとても"Fanatic"な思考で褒められたものではありません。あまり先走りすぎず、本編を純粋に楽しまねば損ですね。
では、Chapter3,4のリリースをお祝いしつつ、この考察とは呼べない与太話を終わらせます。発売おめでとうございます!予想が当たっていても外れていてもプレイするのが楽しみです。
なお、404ページが偽物であることを見抜いてくれた友人と、今回のUnicode顔文字の調査に協力してくれた友人に感謝いたします。
ちなみに、筆者は生粋のWindowsユーザーなので、Macの話はわかりません。Mac基準だとまた違う計算になるかもしれません。また、プログラマーではないため、これ以上専門的な話はわからないので考察が間違っている可能性もあります。詳しい方はSNSやYoutubeなどに検証を投稿していただけると幸いです。